こんにちは、心理学ライターのshinです。
人は現状維持を好みやすいというのはよく知られた事実です。社会科学の分野では「現状維持バイアス」という名前までついています。
たとえば、
ダイエットを決意したのに食べるのをやめられない
転職したいとは思っているけど、今の会社にずっと居てしまう
ダメダメな彼氏なのに惰性で付き合ってしまっている
と挙げだすとキリがありません。
いずれも変化を好まないという共通した人間心理からきています。
少し前までは変化がそれほど激しい時代ではなかったので、現状維持バイアスは問題ではなかったのですが、変化の激しい時代では足枷にしかなりません。
この現状維持バイアスの仲間とも言える心理傾向が現代社会での大きな落とし穴になりかねません。
それが「以前はこの方法でうまくいったから、今回もうまくいくだろう」という思い込みです。
勝てば勝つほど成功に固執しやすくなる!?
ノース・ダコタ大学の心理学者ジェフリー・ウェザーレイ教授は非常にくりクリエイティブな方法で実験を行いました。
彼は、被験者となる大学生に、スロットマシンで遊んでもらい、儲けは現金で支払うと告げます。
ただし、スロットマシンには大当たりが出るマシンと中程度のあたりしかでないマシンの2つが用意されていたのです。(被験者は知りません)
これによって、大当たりが出るビッグウィンマシンでプレーした人と中程度のあたりしかでないスモールウィンマシンをプレーした人を作りました。
その後、双方が1時間プレーしたあと、被験者には「実験を終了します。このあとはご自由にスロットマシンで遊んでもらってかまいません。」と告げられました。
実はここからが実験の本番で、研究チームが知りたかったのは「実験が終わり」と告げられた後にどれぐらいスロットマシンで遊んでいたのかということでした。
その結果、スモールウィンマシンで遊んでいた被験者たちは平均して58回でプレーするのをやめていました。
一方で、ビッグウィンマシンで遊んでいた被験者たちは、切り上げるまでに平均して72回もプレーしていたことがわかったのです。
ウェザーレイ教授は一度大きく勝つ興奮を味わった人たちは、冷静さを欠いてギャンブルをやめられず、大勝ちした時のやり方が絶対だと思い込む傾向があると結論づけました。
そして彼はこの傾向のことを「ビッグウィン仮説」と名付けたのです。
まとめ
つまり、私たちは前の成功体験に囚われて、さらに良い選択肢があったとしても無視してしまう傾向があるということです。
これは心理的な傾向なので、ギャンブルだけに留まらず、普段の生活、そして特にビジネスに当てはまります。
たとえば、有名なハーバードビジネススクールの教授、クレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーションのジレンマ」はまさにこの心理傾向からきているのではないかと考えられます。
優れた商品(過去の成功体験)に固執してしまう結果、新規事業や新興市場に参入するのが遅れてしまい、大企業が衰退してしまうのです。
これは本当に気をつけなければいけない傾向で、たとえ一度、成功したとしてもそれがどの要因によるものなのか私たちはほどんどの場合、特定できません。
にも関わらず私たちはなんらかの因果関係をつけて成功の方法論を勝手に作り出してしまい、その方法に執着してしまうのです。
サッカーの本田圭佑選手が
「成功に囚われるな、成長に囚われろ」
という名言を残していますが、まさに「ビッグウィン仮説」への戒めとも言えますね。
うまくいっている時こそ、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
じゃあまたね〜。
参考文献、オススメ本
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