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人生を変える心理学「セルフ・コンパッション」入門編

投稿日:2020年12月15日 更新日:

こんにちは、心理学ライターshinです。

今回は現在の心理学で注目を集めている「セルフ・コンパッション」について詳しく説明したいと考えています。

「もっと自分に自信を持とう」とか「自信が大切だ」みたいなことをよく聞きますが、自信を持つことには副作用があったりするわけです。

心理学の世界では自信に変わる考え方として「セルフ・コンパッション」というものがあります。

「セルフ・コンパッション」はアメリカの心理学者であるクリスティーン・ネフ博士によって有名になった言葉で、自分自身に対する「思いやり」や「優しさ」を持つという心理状態のことです。

「セルフ・コンパッション」は幸福感が高めたり、レジリエンス(逆境力)を高めたり、ストレスを軽減したりと様々な効用があることが研究によってわかっています。

このような「セルフ・コンパッション」をネフ博士は基本的な3つの要素としてまとめてくれています。

その3つの要素は
「自分への優しさ」(self-kindness)
「共通の人間性」(common-humanity)
「マインドフルネス」(mindfullness)

に分けられます。

今回はこれを1つずつ見ていきましょう。

自分への優しさ(self-kindness)

セルフ・コンパッションの構成要素の1つ目は自分への優しさ(self-kindness)です。

私たちは自分がミスをしたり、目先の欲求に勝てなかった時に自分を責めてしまう傾向があります。「自分はバカだ」、「自分なんて何にもできない人間だ」などと自己批判を繰り返す人はよくいます。

一見すると自己批判を行うと、次のミスが少なくなるように思えますが、実は逆なんです。

過去の記事でも書きましたが自己批判的な態度を取ってしまうとむしろ自己破壊的な行動につながってしまうことが少なくありません。

fMRIを使った研究では自己批判的な反応は、脳のエラー処理と問題解決に関わる部分が関連していました。

そこで大切になってくるのが「自分への優しさ」です。

自分に対しての優しさと安心感を提供することは肯定的な感情や慈悲に関わる脳の分野が活性化するのです。

ほかの研究でも自分自身への思いやりや優しさが落ち込みや恥の感情を低下させてくれることもわかっています。

私たちは自己批判ではなく、自分自身に優しくするべきなのです。

自分に甘くするなんて、、という方もいるかもしれませんが、覚えてもらいたいのは、あなた自身があなたを責める必要は全くないのです。自分が間違ったときには必ずほかのみんなが指摘してくれますから。(不倫を見ていれば明らかです。笑)

共通の人間性(common-humanity)

セルフ・コンパッションの2つ目の要素は共通の人間性(common-humanity)です。

私たちは、自分たちが苦しい時にまるで孤立しているかのように感じてしまうことがよくあります。

受験に失敗したり、仕事で大きなミスをしてしまったとき、それはまるで世界で自分しか経験したことのないような感覚に陥ってしまった経験はあるのではないでしょうか。

さて、それは本当にあなただけが経験した特殊な状況なのでしょうか?

間違いなく違うでしょう。冷静に考えてみれば受験に失敗した人はかなりの人数がいるわけですし、仕事であなたよりも大きな失敗をした人は少し探せばいくらでも出てきます。

しかし私たちは、悲しいことに恥ずかしさや不完全さを感じるとき、それが他者と共有しているという事実に注目することができず、まるで自分だけが世界で孤立しているように感じてしまうのです。

さらに辛いことに近年はSNSの普及によって自分と人を比べることがかつてないほど容易になりました。

私たちは芸能人やインフルエンサーをはじめとしたキラキラした写真を見て、「なんて自分は惨めなんだ」と自分と比較してしまいます。

当たり前なのですが、SNSは良い部分しか見えません。あなたが憧れている芸能人も私たちと同じような苦しい、悲しいといった感情を持っているのです。

残念ながら完璧な人間はいません。たとえいたとしても、そのような人にあなたは好意を抱くでしょうか。

そんな友達を欲しいとは誰一人として思わないでしょう。

不完全さこそが人間らしさなのです。

マインドフルネス(mindfullness)

セルフ・コンパッションの3つ目の要素はマインドフルネス(mindfullness)です。

マインドフルネスの定義としては現在起こっていることに対する正確な理解と中立的な受容を意味しています。

私たちはなにか悪いことが起こったとき、それに対して過剰な反応をしてしまい勝手に現実を歪曲してしまうことがよくあります。

たとえば、仕事でミスをしてしまって上司に叱られたとしましょう。あなたは負の感情に飲み込まれてしまい、仕事をクビになるのではないかと考えて、パニックになってしまいました。

しかし、このストーリーのなかで現実で起こっているのはミスをして叱られただけです。

つまるところ、私たちは強い感情に飲み込まれてしまった時、現実を歪曲し、さらにひどい方向に考えてしまうのです。

上記のネフ博士はこのプロセスを「過剰な同一化」と呼んでいます。

このネガティブな感情に支配される「過剰な同一化」を防いでくれるのがマインドフルネスの考え方なのです。

マインドフルネスは自分の意識の中、今ここで何が起こっているのかを客観的に眺めることを意味します。

そうすると、現実をありのままに見ることができ、自分たちの曲がった現実を元に戻してくれるのです。

私たちの感情は空を飛んでいる鳥のように、出てきては消えて、出てきては消えてを繰り返し、刻々と変化していきます。

マインドフルネスはありのままを眺め、それを受容することによって悲しみのループから抜け出すことができるのです。

実際にジョン・カバット・ジン教授のMBSRと呼ばれる8週間のマインドフルネスストレス低減法プログラムに参加することで人生の困難に対するストレスを低減してくれたり、慢性的な痛みが低下したことがわかっています。

このマインドフルな感覚こそが「過度の同一性」から逃れることを許してくれるのです。

まとめ

ここまでセルフ・コンパッションの基礎的な3つの要素を詳しく解説してきました。もう1度だけ復習すると

「自分への優しさ」(self-kindness)
「共通の人間性」(common-humanity)
「マインドフルネス」(mindfullness)

の3つの要素です。

では、セルフ・コンパッションをどのように使えばいいのかについて1つだけ実践的なテクニックをご紹介したいと思います。

セルフ・コンパッションのエクササイズとして挙げられる代表的な方法は「自分自身に手紙を書くこと」です。


まずはあなたの恥を感じること、不安を感じること、十分ではないと感じることを想像してみましょう。

そのことを考えた時、あなたはどのような気持ちになるでしょうか。苦しみや不安、怒りといった感情が込み上げてくるかもしれません。

次に、無条件にあなたを受け入れ、優しくしてくれる架空の友人を想像してみましょう。(実際の友人である必要はありません)

その人はあなたのことをよく知っています。あなたの強みも弱みも何もかもです。しかしこの友人はあなたに対して無条件の慈悲を与えてくれ、人間は完璧ではないことを認め、あなたにとても寛容です。

想像できたらあなたが認めている自分自身の不満に対して、この架空の人物の視点から手紙を書いてみましょう。

手紙を書くときには受容、優しさ、思いやりを意識してみましょう。

その後、手紙をしばらく置いておき、時間が経ってから読み返してみてください。そのときにあなたを包み込んでくれる優しさや思いやりを感じましょう。


手紙を書くテクニックはこのような方法になっています。

これほど単純なものでも、十分に自己への優しさや思いやりを感じることができると思います。

このエクササイズのようにセルフ・コンパッションは人生において苦しみは付きもので、それを避けるのではなく、向き合う知恵を与えてくれます。

「自分自身を責めるのではなく、受容していく」これこそが健全な人間観であり、1度きりの人生を幸せに導いてくれるのかもしれません。


というわけで人生を変えたいのなら「セルフ・コンパッション」の考え方を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

じゃあまたね〜。








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