心理学ブログ

Just another WordPress site

意思決定の心理学 行動経済学

自分の持っているものは失いたくない心理の「保有効果」を行動経済学で解説

投稿日:

こんにちは心理学ライターのshinです。


年末の大掃除を思い出した欲しいのですが、物を捨てられなかった経験ってありませんか?

まあ大掃除でなくても自分のものを捨てるのって難しいですよね。おそらくほとんどの人がこのことを実感していると思います。

では、なぜもう使わないだろうと思うものがなかなか捨てられないという現象が起こるのでしょうか?

この答えは行動経済学という分野が答えを出してくれています。


私たちは「保有効果」や「授かり効果」(endowment effect)といって、自分の所有物を必要以上に過大評価する傾向がみられることがわかっています。

とても有名な研究でこのことが明らかにされていますので、みてみましょう。

人は自分のものを高く見積もる傾向がある!?

1990年にエイモス・トヴェルスキーとのちのノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネマンがある古典的な実験を行いました。

まず、学生グループに買い手組と売り手組に分かれてもらいました。

売り手組側はコーヒーのマグカップを1つずつもらい、それを自分のものにしても良いし、売りたければ売っても構わないと言われました。

次に売り手組はこれ以上なら買っても良いと思う値段を提示してくださいと頼まれました。一方の買い手組はマグカップを見せられ、これ以下なら買って良いと思う値段を提示してくださいと言われました。


その結果、とても面白いことがわかりました。平均すると買い手は2.25ドルまでなら払うと答えたのに対して、売り手側はそれでは売れないと言い、なんとその倍の額を要求したのです。


学生たちは実験が行われるついさっきまではこのマグカップについてみたことすらなかったし、自分で選んだ訳でもないにも関わらずです、、

まとめ

つまり、私たちは自分の所有しているものを実際の価値よりかなり高く見積もる傾向があるということで、これを「保有効果」(endowment effect)と呼びます。

この効果については他のさまざまな研究でも裏付けられています。

自分で選んだ訳ではなくお金を払ったわけでもないのに、自分のマグカップを高く評価したのは意外かもしれませんが、これはこの実験の面白いところでもあります。

自分が進んで手に入れたかそうでないかに関わらず、私たちは自分の所有しているものという感覚がその主観的な価値をあげているのです。


これは最初に取り上げた、なぜものを捨てられないのかというのにも繋がってきます。もう価値がないとわかっていても自分のものというだけで、不合理な選択を取ってしまうのです。

自分がものを捨てられない時には本当にそれは置いておく価値があるものなのか、それとも「保有効果」が影響しているのかを考えてみましょう。


というわけでみなさんは「保有効果」に引っかからないように気をつけて。



参考文献、オススメはこちら

意思決定の仕組みを知りたい方へのオススメがこちら

-意思決定の心理学, 行動経済学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

将来の自分を想像すれば欲求に勝てる!?「現在バイアス」への対策法とは

こんにちは、心理学ライターのshinです。 あなたはこんな経験がありませんか?「ダイエットをすると決めたのにチョコレートを食べてしまった」「明日までにやらなければいけない仕事があるのに動画を見てしまっ …

人間関係をこじらせる大きな罠となる「偽の合意効果」とは!?

こんにちは、心理学ライターのshinです。 あなたは人間関係で相手のことが理解できず、コミニュケーションがうまくいかなかった経験はありませんか? 大抵の人は一度は経験をしているとは思うのですが、できれ …

集団での意思決定は危険がいっぱいだった!?意思決定の心理学

こんにちは、心理学ライターのshinです。 当たり前ですが、企業や団体など様々な組織の意思決定ってのは非常に大事で、特に集団が大きくなればなるほど意思決定の影響も大きくなりますよね。 そういった重要な …

意思決定を歪める「自前主義バイアス」の罠とは!?

こんにちは、心理学ライターのshinです。 あなたは自分の作った料理が他人の作った料理よりも美味しく感じてしまったことってありませんか。 自分が作った料理の方が他人の作った料理が美味しいなんてあたりま …

行動経済学で人の行動を大きく変える「デフォルト」の効果とは?

こんにちは、心理学ライターのshinです。 私たちは普段から将来のために好ましい行動を取ろうと考えていますが、なかなか行動に移せなかったりします。 たとえば、働いている人なら将来のために貯金することは …