こんにちは、心理学ライターのshinです。
あなたは人に親切をした後に、いい気分になって少し自分勝手な行動をしてしまった経験とかありませんか?
たとえば、道端でお婆さんが重い荷物を持っているのをみて手伝ってあげて、いい気分になってその帰りに信号無視してしまったとか。
この経験はあまり一般的にはないかもしれませんが、このように道徳的に良いことをした後や、人に親切をした後に自分の好きな行動をとっていいと思ったことはあるのではないでしょうか。
実はこの傾向は心理学の世界ではよく知られており、良いことをしたあとは自分の好きなように行動していいと思いがちなことがわかっています。
この傾向について明らかにした研究を紹介しましょう。
道徳的に良いことをした後は自分にライセンス(許可)を与えてしまう!?
心理学者のブノア・モナンとデイル・ミラーは研究の一部として学生たちを二つのグループに分けてそれぞれ以下のような意見を評価してもらいました。
1つ目のグループ
「ほとんどの女性は本当に頭が良いとは言えない」
「ほとんどの女性は外で仕事をするよりも家で子供の世話をする方が向いている」
この意見に対して「全く反対」から、「全く賛成」までの4段階で評価してもらいました。
2つ目のグループには少しニュアンスを変化させて
「なかには本当に頭が良いとは言えない女性がいる」
「なかには外で仕事をするよりも家で子供の世話をする方が向いている女性もいる」
で先ほどと同じように4段階で評価してもらいました。
そうすると、最初の2つの意見を評価するように求められた学生たちは、この意見に対して反対しました。
一方で、次の2つの意見を評価するように求められた学生たちは、中立的な態度を示しました。
実は実験には続きがあり、この評価を終えた後学生たちは就職面接という設定で意思決定をするシナリオに参加しました。
彼らに与えられた課題は、建設や金融などの典型的な男性中心の業界の上級職に対しての男女数名の候補者の適性を判断することでした。
すると、あからさまな差別発言に対して強く反対した学生たちの方が、性差別が和らいだ意見に賛成した学生たちよりも、その職種には男性が向いていると判断したのです。
まとめ
つまり、性差別に強く反対した人ほど、面接で実は性差別的な見方をしがちだったってことですね。
このように私たちは、自分が道徳的に正しいことをした後は、「良いことをしたのだから自分の好きなように行動していいだろう」と思ってしまうんですね。
このような傾向のことを心理学の専門用語で「モラル・ライセンシング」と呼んでいます。
たとえば、自分は今日はしっかり仕事をしたのだから家では自分勝手にしてもいいだろう、とか全く関係のないことに飛び火することもあります。
気をつけなくてはいけないのは、この「モラル・ライセンシング」は誰にでも起こりうることだということ。
まあ、正しい行動をとりつづけられる人なんてほとんどいないですからね。
とはいえ、この「モラル・ライセンシング」が大きなミスを引き起こすことも十分に考えられます。
もし、「モラル・ライセンシング」を避けたければ、特に自分が良いことをしたな、と感じた時にこそ注意が必要です。
というわけで、「モラル・ライセンシング」の罠に引っかからないように気をつけてみてはいかがでしょうか。
じゃあ、またね〜。
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