こんにちは、心理学ライターのshinです。
普段から私たちはさまざまな選択を迫られるわけですが、みなさんは自分の選択はもちろん自分で決めていると思っていますよね?
しかし、さまざまな研究によると実際は私たちはかなりの割合で周りの人の影響を受けて決断していることがわかっています。
これはもともと人間が社会的な生き物であり、他者から学んだりすることによって生き延びてきたということもあります。
この他人からの影響力が面白い形になって現れているものがあります。
それはなんと私たちが何を買うか、そして何を聞くかといった趣向にまで他人が影響しているということです。
このことを発見した優れた研究を見てみましょう。
売れているものはさらに売れていく!?
社会学者のマシュー・サルガニクらが無料で音楽をダウンロードできるサイトを使って行なった実験があります。
この実験では、彼らはもともと有名なバンドや曲は使うのではなく、無名のアーティストの知られていない曲を集め、リストの曲の並びは注目度を均等にするためにユーザーごとにシャッフルされるようにしました。
ユーザーの一部にはそれまでサイトを利用した人がどの曲を気に入ったか、そして曲ごとのダウンロード数をを表示し、人気順に並べました。
他の人がどのような曲を選んだかの情報を提供すると、人々は最初の人に追随するような動きをみせ、結果的に人気の曲とそうでない曲の差が大きく広がっていったです。
そこで彼らは続けて人の割り当てをランダムにし、8つの異なるグループを作り、もう一度実験を行いました。
この8つの異なる世界(グループ)は全く同じ条件で始まるように、アクセスできる情報を揃え、全曲がダウンロード数がゼロからのスタートにしました。
この条件にすると、もし曲の成功が質で決まるのなら8つの世界の曲の人気順はかなり似通ったものになるはずです。
結果はどうだったのでしょう。
なんと世界ごとに全く異なった曲の人気順になったのです。ある世界で1位をとった曲が、別の世界では最下位に近い48曲の中で40位だったこともあったのです。
この結果は、最初に人気の曲であるとそれが雪だるまのように大きくなっていき、最終的な順位に影響を与えたということをはっきりと示しています。
まとめ
つまり、ざっくりいうと最初の小さな数の差が曲の売れ行きに大きく影響したってことです。
これは曲だけに関わらず、作品の質がよければ人気が出るという従来の考えを根底から覆してしまうような研究でもあります。
だた、これは実際にも起こっていることなのです。
例えば日本でも知らない人はいない「ハリー・ポッター」の作者であるJ・K・ローリングは「ハリー・ポッター」の原作を売り込んだところ12の出版社から断られたと言われています。
編集者という作品を評価するプロでさえ、どの作品が人気になるのかは正しく評価できないのです。
この結果からわかることは主に2つです。
1つ目は作品を作る側の人間としては作品の質が良いだけでは不十分で、その作品の売り方(マーケティング)も大切であるということ
2つ目は私たちは自分が独特の趣味や趣向を持っていると思っているが、それは幻想であり、実は知らない間に周りの人や他人からの影響を受けているということ
です。
というわけで人気だからという理由だけで自分がその選択を選んでいないかをじっくり考えてみてはいかがでしょうか。
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