心理学ブログ

Just another WordPress site

影響力の心理学 意思決定の心理学 行動経済学

人は未来のことに寛大になる傾向がある!?「ギブ・モア・トゥモロー」の心理学

投稿日:2020年10月17日 更新日:

こんにちは、心理学ライターのshinです。

今回はどのような頼みごとを相手が引き受けてくれやすいのかについて解説したいと思います。

私たちは普段から相手に自分にとって好ましいような提案を行い、相手に行動を取らせようとしています。

たとえば、パートナーや恋人に対してより健康的でいてもらうために運動することを促したり、貧しい子供達を助けるためのボランティアとして街ゆく人に募金を促したり、、

この二つは一見すると全く異なった状況のように見えますが、相手を説得して自分の提案を受け入れてもらい、相手に行動を取らせようとしているという点で同じです。

こういった風に私たちは普段から何気なく説得を行なっています。

では、このように相手に特定の行動を取らせる確率を高めるためにはどのような提案をすれば良いのでしょうか?


答えは、少し先の遠い未来についての提案をすれば相手はこちらの説得に乗ってくれる可能性が高くなります。

というのも実は、人は将来のことについての提案に対して、より気前がよくなることがわかっているのです。

2ヶ月後の約束ならより多く引き出せるかも!?

アリゾナ州立大学の経済学者のアンナ・ブレマンは将来に気前のよくなる傾向があるのかボランティアを利用して調べました。

ブレマンは、発展途上国の地域における持続可能なプロジェクトを支援する「ディアゴニア」というスウェーデンの慈善団体と協力し、実験を行いました。

実験のために、募金集めを以下の2通りの方法で試してみました。

1つ目が「ギブ・モア・ナウ」というプログラムで寄付した人の口座から毎月、自動的に引き落とされる寄付金を今から増額するというもの

2つ目は「ギブ・モア・トゥモロー」というプログラムで、毎月寄付金が増額すること同じですが、増額の開始が2ヶ月後というもの

つまり、増額が今始まるのかそれとも2ヶ月後に始まるのかという違いでした。


この2つの寄付金を比較してみたところ、「ギブ・モア・トゥモロー」に参加を依頼された人たちは「ギブ・モア・ナウ」に参加を依頼された人たちよりも寄付金の増額が32%も多いということがわかったのです。

さらに、この効果は短期間では終わらずに、なんと12ヶ月後も96.6%もの参加者が寄付を続けていました。

まとめ

つまり、私たちは将来のことについては気前がよくなり、さらにその効果は私たちが思っている以上に長続きするのです。


これは、前回紹介した自分の未来のことを過度に楽観視してしまうという研究とも一致しています。

将来の労力や金銭については現在と心理的に距離があるため、なかなか自分ごととして捉えにくいのです。

しかし、この傾向をうまく使うと他人からの金銭面や労力的な面で協力を得やすくなります。

たとえば、1ヶ月後の契約を今、取り付けてしまことや、人にお金を投資して欲しいなら2ヶ月後にお金を投資してもらうといった具合に。


ただ、これは逆にいうと自分も未来のことについて気前よくなりすぎてしまうことが注意しなくてはなりません。

あまりにも現在の自分から距離のある未来への契約や約束については、それは今すぐにと言われた時に行動したいかを考えるべきだと言えるでしょう。


というわけで、人は未来のことには気前がよくなるという傾向を頭に入れて相手を説得してみてはいかがでしょうか。

じゃあまたね〜。







参考文献、オススメ本はこちら

将来をなぜ見誤ってしまうのか知りたいならこちら

-影響力の心理学, 意思決定の心理学, 行動経済学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

影響力の武器を徹底解説<好意の原理編>

こんにちは、心理学ライターのshinです。 みなさんは影響力の武器という本を聞いたことがありますか? 影響力の武器は心理学を学ぶ基礎としてとてもいい本であるだけでなく、人を説得するときにどのようにすれ …

Amazonレビューは間違いだらけ!?衝撃の事実とは

こんにちは、心理学ライターのshinです。 最近はとても便利な世の中になってきて、部屋から一歩も出なくても大抵のものが買えるようになりましたね。 特にアマゾンはここ10年ほどで一気に普及して、私たちの …

有能な人だと思われるための「ハロー効果」の使い方の心理学

こんにちは、shinです。 今回は「ハロー効果」について解説していきたいと思います。 あなたは日本人で英語を話せる人を見たときにどのような反応をするでしょうか? 「カッコいい」「憧れる」などさまざまな …

人間関係をこじらせる大きな罠となる「偽の合意効果」とは!?

こんにちは、心理学ライターのshinです。 あなたは人間関係で相手のことが理解できず、コミニュケーションがうまくいかなかった経験はありませんか? 大抵の人は一度は経験をしているとは思うのですが、できれ …

良いことをしたあとは悪いことをしたくなる!?「モラル・ライセンシング」の心理学

こんにちは、心理学ライターのshinです。 あなたは人に親切をした後に、いい気分になって少し自分勝手な行動をしてしまった経験とかありませんか? たとえば、道端でお婆さんが重い荷物を持っているのをみて手 …