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意思決定の心理学 脳科学

人間に自由意志など存在しない!?名著「ホモ・デウス」が明かす自由意志の幻想

投稿日:2020年11月26日 更新日:

こんにちは、心理学ライターのshinです。

突然ですが、あなたには自由な意思が存在していると思いますか?

この質問をされるとほとんどの人は面を食らったような顔をするでしょう。中には何を言っているんだ、と怒りを感じるかもしれません。

それもそのはずです。私たちが普段生活している世界はこの自由意志を前提としています。

たとえば、資本主義社会では消費者の決定が正しいとされていますし、民主主義では投票者の意見は正しいと考えるのが前提となっています。

あなたが誰を愛するのか、そして何を買うのか、どのような仕事につくのかを自分で決めている、そう信じているでしょう。

では、本当に自由意志は存在するのでしょうか?


残念ながら科学研究では、人間の情動や意思決定は進化の産物であるアルゴリズムによって決められているということが示されています。

人の行動は事前に予測できる!?

2008年に科学者たちによってのちに有名となる脳スキャナーを使った実験が行われました。

実験の1つとして科学者たちは参加者を両手に1つずつスイッチを握った状態で大きな脳をスキャンする機械の中に入れます。

その後、彼らは参加者に対していつでも気になった時に両手にあるスイッチの中から1つを選んでくださいと言いました。

その間、科学者たちは脳の神経活動を観察していました。


この結果、脳の神経活動を観察していた科学者たちは参加者がスイッチを押す前にどちらのスイッチを押すかを予測できたのです。(これは参加者が自分の意図を自覚する前にすら可能だった)

まとめ

つまり、決定を下す脳内の神経の活動は本人が自分の選択を意図する数百ミリから数秒前にすでに始まっているということがわかったのです。


これを聞くと、「でもどっちのボタンを押すかはそれでも自分で決められるから自由意志がないとは言えないんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。

たしかに参加者たちは、どちらのボタンを選ぶことはできました。

しかし、右のボタンを押したいという欲求を感じ、その通りの行動を行うことができますが、その欲求自体を選ぶことはないのです。

欲求自体は生化学的なアルゴリズムの産物であり、それは本人にも理解のしようがないということです。


もうちょっと簡単な例として恋愛を挙げましょう。

私たちは好きな人と付き合うかどうか、そしてどの人と結婚するのかという自由はたしかにあります。

しかし、その一方で恋愛自体がしたいという欲求を持つかどうか、同性に惹かれるか異性に惹かれるかどうかに関しては選択の余地がないのです。

なぜ付き合っている人が好きなのかと聞かれて戸惑ったりする人がいますが、むしろあれが正しいのです。その人に惹かれる理由がわからないのです。

繰り返しになりますが、欲求(この人と付き合いたい)と感じて行動(告白する)ことはできますが、この欲求自体を自分では選んでいないのです。


とはいえ、人は後からこじつけるのが上手いのでたとえ、顔が整っていてイケメン(優秀な遺伝子の特徴)だから好きになったとしても、本人は自覚していないので優しかったからなどといった誤った結論になってしまうことが多々あるのです。

そう考えると人間は本質的には動物の一種なんだな〜と感じさせられるいい例ではありますね。


というわけで自由意志という言葉を過信せずに、フラットな目線でものごとを見てみてはいかがでしょうか。

じゃあまたね〜。




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